あのときのクリスマスプレゼントは…

ダイミクだけどアダンとミクリの話。 ほぼ捏造。


「ねえ、ダイゴ君、聞いて。今年のクリスマスはね、ちょっと変なんだ」
「へえ、何が?」
「うん……クリスマスの朝にはいつも、目を覚ますと枕元にプレゼントがおいてあるんだけどね、……今年はなかったんだ」
「ふーん……じゃあ、これからもらえるんじゃないの?」
「そうかなあ……」


「やっと分かりましたよ」
新聞を読んでいる師匠のその顔を、横から急に覗き込んで私はにこーっと笑ってそういった。
よほど新聞の記事に集中していたらしい師匠は急に視界に割り込んできた私に驚いて、目をぱちくりさせる。
「……なにが」
ぱさり、新聞をたたんでテーブルに置いた。それを見計らって、私はソファの、師匠の隣に座り込む。
「あの、10年前のクリスマス。確かにあげたと言われた不思議なクリスマスプレゼントのことです」
私がやっとわかって、嬉しそうにしてるところに、師匠は、しばし、記憶をあさり、何かを思いついてぽんと手を打った。それから逆に驚いて呆れて、
「なんだ、まだそんなこと覚えていたのか」と。
「……というか、今の今まで、気付いていなかったのか」
何だかおかしそうにくっくっと笑い出す。
「な……なにも笑い出さなくても。わたしはずっと考えていて、それが今になってこうして分かって、ほんと嬉しいんですから。分かったことに対しても、プレゼントの中身に対しても」


――それは十年前。
クリスマスのプレゼントは、毎年朝目覚めると枕元にあった。
けれどその年は、何もなかった。あれっ? とおもって、でもプレゼントの催促をするような子じゃなかったから何も言わずにいた。
そしてそのクリスマスの日の夜になって、アダン師匠は言ったのだった。
「クリスマスプレゼントは、ちゃんと、あげましたよ」
「?」
「ふふ、なんだか、分かるかな? とっても素敵でミクリには必要なものだと思う。ちゃんと、あげましたから」
「???」
どう考えてもその一日のうちでなにか貰った記憶はなかった。
気付かなかった? なんでも自分にとって大切なものらしいが……。
これは謎賭けみたいなものだろうか。
自分は一体、何を貰ったのだろう。

それから、ずうっと、そのことが気にかかっていた。
あの日のクリスマスプレゼントは一体何だったったのだろう、と。

「そういえば、いつかそんなこと、言ってたね」
それから10年後になって、今年のクリスマス。それが一体なんなのかまだ分からないんだ、とその話をすると、しばし記憶をあさる仕草をした後ダイゴは言ったのだった。
「え、わたし、ダイゴにこの話したっけ?」
「ああ、たしか聞いたよ。ちょっとまってね、いつだったか、ええともうずいぶん昔に……」
腕組みをして、また記憶をあさる。
ダイゴとの付き合いは長い。もう10年にもなる。友人だったダイゴは、やがて私のかけがえのない恋人になっていた。
そんなダイゴと、出会ったのはいつだったか……。私も記憶をあさっていると、隣でダイゴが、あっとつぶやいた。
「……思い出した。なんだ……」
「え?」
「それね、君と初めて出会った日だよ。僕は友達になったばかりのミクリがちょっと心配そうに今年はプレゼントがなかった、って言ってるのを、現在進行形で聞いていたんだ」
ダイゴに言われたとたん、忘れていたその日のそのシーンが、ふわっと蘇ってきた。
あ、そうだ。思い出した。
プレゼントをもらってない少しの不満を抱えたまま、今日は出かけるから一緒に来なさいといったアダン師匠に連れられて、いった先、デボンの会社で私はダイゴに出会った。
人見知りする私が、不思議と難なく打ち解けて、ダイゴとはすぐに友達になった。
そこでイモヅル式にふと、蘇る、帰り道での光景。
友達ができた、と嬉しそうに報告する私に、アダン師匠は尋ねる。
「……どうですか、彼はいい子でしょう?」
「うん」
「そうか……それはよかった」
不思議と満足そうに微笑んだ師匠の表情まで思い出したときはっとした。
そうか、そういうこと……!


「あの10年前のクリスマスのプレゼントは、ダイゴとの出会い、だったんでしょう?」
聞くとアダン師匠はうなずいた。
「そうそう。やっとわかったか」
人との出会いを、プレゼントできるものだとしたら、そんな素敵なプレゼントなんてない。
「今になって、そのありがたさは身に染みる……けど、子ども心になんて、わかるはず無いですよ」
おかしくて笑った。この年になって、今になってやっと気付いた。
「私の見立てに狂いはない。あの時期に、あの人材に出会う。であわせたタイミングも、ダイゴ君という人間も。……間違いではなかったようだな」
私を眺めて師匠は満足そうに言った。
「……ただ、ちょっと手出しが早かったのは予想外だが」
「え?」
「いや、こっちの話」
「……あ、もう行かなくちゃ」
時計を見ると、話しはじめてからけっこう経ってることに気づいた。
「さっき帰ってきたばかりだと思ったが、またどこか出かけるのか」
「ええ、……さっきやっとこのことがわかって、嬉しくて思わず確認しに来ちゃったんです。ダイゴを待たせたままで。だからもう戻らないと。何も話さず待っててとだけ言って来ちゃったからたぶんダイゴはわけ分からないまま首傾げて待ってますよ……怒ってないかな……じゃ、また行ってきます」

あわただしく出て行ったミクリの背中を、アダンは満足そうに、見送った。

END



 

 

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