| キッカケは……。 アダミク。裏っぽいの嫌いな方はちょっと注意。
結局エロくなりきらなかったので表で。
やばい、やばいとおもいつつ、どこで止めたらいいのかもう分からない。
なにか、キッカケを……!
ふと気がつけばソファーの上、私がミクリを押し倒している。服を半ば脱がしかけたところで正気に戻ったのだった。
ああしまった。
もっとはやくに正気に戻るべき、もしくは最後まで(最後ってどこまでだ)正気に戻るべきじゃなかったのにこんな中途半端なところで、理性が、良心が、道徳心がふっともどってくるなんて。
こんな事態に行き着いた、最初のキッカケは何だったか。
私は考える。
たしか、ちょっとしたことだ。らしくもなく2人でじゃれあっていて……。
そうだ、昔みたいな感覚で、冗談で、ミクリの首をくすぐったんだった。子供にやるようなつもりで。そしたら思いがけず「あん」なんて可愛い声をあげたものだから、つい。
……つい、で私が手を出してしまうのもおかしい話だった。
でも、そう。おかしかったんだよな……。
なんとなくそこでミクリが「やめてくださいよ」と言って冗談になるのを予想していたのに、ミクリはいわなかった。かわりにくすぐった指をそのままするりと首筋を撫でて落としたところに「あ……」と官能的に漏れた声。
ふと見ると、ミクリは頬をわずかに染めてとろんとした瞳で私を見ている。
そこから、何の疑問もなく、その場は……このソファーの上は「そういう雰囲気」になってしまったのだ。
ミクリは弟子だ、そういう対象にしちゃいけない。
などとまともなことを思いついたのはたったいま、後になってのこと。
目の前にいるのは魅惑的な青年で、恍惚に浸りかけの色っぽい表情をして、頬を染めて私を見る。あまりにありがちすぎる、行為への入り口のワンシーンに、こういう場面に慣れた私の体は自然と動いて、相手を満足させようと甘いキスをした。首筋に顔をうずめて口付けると、敏感な体が反応してミクリが身をすくめる。
「ん……」とくぐもった声でわずかに呻く、……いい反応するな、と思ってゆっくりとミクリの体をソファーに押し倒しつつ、私は自分の手を手をミクリの体に這わせた。
「あ……ん」
ミクリのあげた甘ったるい声が耳に掛かって私をぞくりとさせる。
で、そのままずるずると……。そんなに時間も経ってないが。そしてそんなに状況も進行していないが。ミクリの息が上がるくらいは快感を与え続けていた。
ソファーの上で押し倒されたミクリが、乱れる呼吸の合間に熱に潤んだ瞳で正気の私を見上げた。
なんて状況だ。
私は何をやっているんだ。もしくは、どうして正気に戻ってしまったんだ。
?……なんでだったかな。
正気に戻ったキッカケは、なんだったか……。
私は思い出そうとする。
服の下にもぐらせた手がなめらかな肌をなぞっていくと、ミクリの息が次第に上がっていった。
そんなに束縛しているわけではない、でも、ミクリは抵抗を見せる気配はなかった。
手のひらは服の下からくびれた腰の辺りをなぞりあげつつ、唇はミクリの首から鎖骨、それから開いた胸元へ。
「あ、……んんっ……は、あ、ん」
ふだんの落ち着いた、ちょっとつんとしたミクリの声音からは想像も出来ないような声。とろけるように甘く、高く。
人は誰も快感に浮かされて、とても予想できないような声を出す。誰のよがり声も一度は聞いてみたいものだなんて考えつつ。
服がじゃまだな、と思ってミクリの薄い服に手をかけた。
「あ…」とそれに気付いてつぶやいて、ミクリが自分から服をほどこうとする。その手をつかんで放させて。
自らするすると、服を脱がしていく。青い服がはがれて、きれいな肌があらわになる。
そこへ口付けしたところへ……そうだ、私はそれがキッカケで正気に戻ったのだった。
ミクリがつぶやく。
「あ、ああん………師匠……アダンししょ…う」
甘く呼ばれた言葉
『師匠』
その言葉にはっとしたのだ。
で、正気に戻っていまさら……こんなこと弟子のミクリにしてはいけないと思いつつ……いきなりやめることも出来ずに服をぬがしている。
いけない、いけない、いけない。
なにか、キッカケ……そう、この事態を変えるキッカケが、あれば。
そんなこと思いつつ、私はキスをする、ミクリの甘い声が上がる……。そこで。
ピンポーン
軽やかに部屋に呼び鈴の音が響き渡った。それがキッカケ。
はっとミクリの目が開かれた。
「誰か、来た……」
つぶやいたのはどっちだったか。
そのキッカケにしめた、と思って身を引くとミクリもすぐ起き上がった。起き上がった状態で一瞬、目があって、ミクリが「あっ」といってよけいに頬を染めて目を逸らす。肌蹴た胸元を慌ててあわせて髪を直しながら立ち上がる。
「だ……誰が来たのか見てきます」
きびすを返すとぱたぱたぱた……と小走りで玄関へと向かった。
その背中を見送って、私は大きく息をついた。
――ちっとも抵抗しなかったな。
――はじめは微妙にミクリのほうから誘われたような……気のせいか。
――それにしても、やれやれ……いつの間にかあんな艶っぽくいい体に(コホン)
ミクリとの甘い恋人関係の真っ最中に、あれ、この恋のキッカケはなんだったかな……とふと今日の日を思い返すのはまた先のこと。
END
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