ナギサの問題

オーバ←デンジ。恋するナギサの問題児。


 

「おい」
と呼ばれた声にデンジは振り返った。
ここはナギサの灯台。展望室には今まで浮かない顔の金髪碧眼の青年が一人いて、遠くを眺めていたのだが、そこに空気をさっと変えてしまう雰囲気をまとうもう一人が入ってきた。
赤いいアフロ。
冗談みたいな頭で平気で外をふらふら歩くその青年、オーバが、入ってきて怒ったような一声でデンジを呼んだ。
振り返ったデンジの浮かない表情が、ふっと変わって口の端が上がる。
「お前、なんだよこれ。停電! ナギサがなにやら大変らしいという噂を聞きつけ久々に来てみたら街中停電で、話を聞いたらまたお前のせいだと言うじゃないか。なにやってんだ」
「ジムの改装」
たったひとこと答えて、デンジは後の予想通りのオーバのリアクションと文句を淡々と聞き流した。その表情が、心なしかとても楽しそうなものなのにオーバは気付かない。
「全く、お前は、何でいつもいつもこう巨大な問題を起こす」
その一言に、デンジはふふ、と笑った。
普段は忘れがちだが実は結構整った顔立ちの彼が形作る、どこか色っぽい微笑の表情に、オーバは不覚にもどきりと驚かされた。
「こうしてお前が来てくれるから」
「え」
「問題を起こせば、お前が来るだろう? 待っていたんだ。ここで、お前が怒った声で『おい』と後ろから声を掛けてくるのを」
やっぱり来た、と言って、デンジはさっきとは打って変わって嬉しそうな表情で展望室の窓の外を見た。
オーバは呆れてしばらくものも言えなかった。
「オレを呼ぶためにわざわざ町中の電気を落として大惨事にしたって言うのか? バカか。電話で呼べ」
「それじゃつまらないだろ。……自分を呼ぶためだけに、誰かが色々なものをかえりみず大問題を起こす。そういうのって、なんかときめく気がする」
「オレはときめかねーぞ、やめてくれ」
「ああ、やめるやめる」
オーバの目は見ず、いたずら好きの子供のような変に純粋な笑顔でデンジが答える。
こんな返事、何の役にも立たない。
「……たくもう。分かってんのかこの問題児が。オレはもう行くぞ。街の人に迷惑かけんなよ」
オーバはデンジにくるりと背を向けた。
その背中をデンジがさっきまでは見せなかった表情、熱い瞳でじっと見つめる。
「分かってないのは、おまえのほう」
言う言葉はホントに小さく、デンジが口の中でつぶやいただけ。
「何か言ったか」
なぜか聞きつけて振り向いたオーバに、デンジはさっと視線を逸らした。
一度逸らした瞳を挑戦的な強い瞳にしてデンジは再びオーバを見つめる。
「いつか、四天王になってやるよ。ジムリーダーはつまらない」
「あーあー、がんばってくれ」
軽く受け流して、オーバは手をひらひらと振り、またデンジに背を向けた。
そして今度こそ本当にこの灯台を降りて行った。

しばらくオーバが出て行ったあたりを見ていて、デンジはふう、と一つ息をついてまた窓のほうに向かうと、窓の縁にひじをついて、外を眺める。
その瞳に恋の光を宿らせて、デンジはため息をつく。つきながら、次はなにをしようと考え初め、やがてそのことに夢中になる。

そうして一つの恋のために、またナギサに問題が起こる。

END


ダイパはなんか片思いばっかり。

 

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