戦いの後で

ひたすらに×ルビーな話で、アイデアがあれば続く予定。


1、ダイゴ

 

全ての戦いが終わって、移動ポケモン協会本部、バ・グーンの中。

関わった人達の無事と、ホウエンの無事にやっとほっとしてルビーは一人、大広間を出て、外側をめぐる通路、高い空の上から地上をはるか下に移す大きな窓があるところにやってきていた。
何だか一人になりたかった。
大きな出来事が立て続けに起こって、起って……
自分も今までにないくらいの色々な体験をして、受けた経験の多さに何だかまだ酔っているような、不思議な感覚がしていた。
「ともかく、このホウエンは守れたんだな……」
それだけは、確かな真実。つぶやいてルビーはフウとため息をつく。
ふと、見ている景色の手前、窓ガラスに映る背後の人影に気付いてルビーは振り向いた。
「や、ルビー君」
そこにいたのは、片手を挙げて微笑む青年。青に近い銀の髪、紫のラインのはいったセンスの良いスーツ……
この戦いでも大きな役割を果たした、チャンピオンのダイゴだった。
「ダイゴさん」
「ルビー君、久しぶり。そして、お疲れ様」
彼としゃべるのは、ムロの洞窟で、助けてもらった時以来になる。
この戦いで、顔見知りである互いの姿はとらえていて、共に危険な状況にある相手を気にしてはいたが、実際しゃべるのはあの時以来、ということになるのだった。
「お久しぶりです。……というか、こんなふうに再びしゃべれるのが、嘘みたいですね」
そこでルビーはしげしげと、ダイゴの姿を眺めた。
その瞳がふっと幸せそうな表情になって微笑む。
「……よかった。あなたが、父さんが、カガリさんが本当に死んでしまわなくて」
ルビーはダイゴの姿を見て、ああ、生きているんだな、と思うのだった。
死ぬということ……初めて身をもって知らされた誰かが死ぬという意味。
それはルビーにとってあまりにショックな出来事だった。
初めて知った「死」ということの真実。何かが確実に失われてしまうということ。
そのショックで一度突き落とされた絶望は、何の奇跡か、あのポケモンのおかげで救われたのだった。
失ったものが再び元に戻ったというだけでこんなに嬉しく、幸せになるなんて。
生き返ったダイゴや父、カガリを見てルビーは泣きたくなった。
そしてその一人がこうして自分に話しかけているということに生きていることの現実味を引き出され、ルビーはまた泣きたいような気分になる。
「ありがとう。僕はあのとき確かに一度死んだ。それがこうして再び普通に動いて、しゃべっていられるのは君のおかげだ」
ダイゴが心臓の辺りに手をやって言う。その心臓は一時期、確実に止まっていた。
「よかったですよ。ダイゴさんが……こうしてふたたびボクに話しかけてくれる。誰も失われなくて、本当によかった……」
言ったルビーを、何か温かくて優しい感触がふわりと抱き込んだ。
はっと上げた視線の先。バ・グーンの大きなガラス窓に映る自分はダイゴに抱かれていたのだった。
ルビーは驚く。
「ダイゴさん……?」
そのぬくもりにびっくりして何だかドキドキしてしまって上ずった声できいたルビーの声は小さくダイゴの耳に届く。
「死ぬと分かった時……」
ルビーを後ろから軽く抱いたままでダイゴはつぶやく。
「様々な覚悟が、僕の心を通り過ぎた。もともとこの戦いでは僕は命を落す覚悟をしていたから、それらはただ僕の心を確認のために通り過ぎるだけだった……だけど」
ぎゅ、とルビーを抱くダイゴの手に力が入った。
「唯一人、強く恋した相手への想いばかりが僕を捕らえて、本気で死にたくない、と思ってしまった。死ぬ間際まで、もう君の顔を見られない、もう声を聞けないんだ、とそのことばかりが口惜しくて……無念のままに僕は倒れた……。再び、こうして声を聞けるなんて、こうして君に触れられるなんて、まるで夢のようだ……」
ルビーは息を呑む。
それはダイゴの告白だった。
好きだ、の一言を言うよりも強く心を伝える告白。
ダイゴに自分を思う心を打ち明けられて、ルビーはなんだかめまいがした。
ふらつく体をダイゴが抱きこむ。
「一度死んだ命。……君さえいれば、もう僕はなにも、要らない……」
低く耳元でつぶやくダイゴの言葉にルビーは体の芯が痺れていくような気がした。
ふと見たガラス窓に映る自分は恍惚として、今まで鏡の中では見たこともないような美しくも恋に傾きつつある色っぽい表情を見せている。
その表情に驚きながらも美しいな、と思ってしまう。
「でもボクは……」
何を言おうとしたのかわからない。サファイアの名を出そうと思ったのかもしれない。
その言葉は紡がれることはなくダイゴのキスによってふさがれた。
「……」
しばらく大人のキスを受け、唇を離されたルビーは上手い口付けに力を抜かれ、へたんと床に座り込んでしまった。
「……誰か来る」
はっと顔を上げて、ダイゴが廊下の向こうを見やった。
コツコツ、という足音が人気のない廊下に響く……。
ダイゴは手を差し伸べて、座り込むルビーを立ちあがらせた。
「ルビー君、言いたかったのはそれだけ。……僕は、果てしなくきみを愛している、と……それじゃあ、僕は、これで」
ダイゴは瞳を覗き込んで、にこ、とルビーに笑いかけ、背中を向けると片手を挙げた。
そのまま……誰かが来る前にルビーの元を離れ、足音がしてるのとは反対の廊下へ行ってしまった。
ルビーはぼんやりとダイゴが消えていった廊下のむこうを眺める。

To be continued....


ダイゴ×ルビーで登録してたりするのにひとつもないのもどうかと思ったので…
ダイルビはこうやればいいのか、と、コツがちょっとだけわかった気がする。

向こうからやってくるのは誰かな。

 

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