| センリのひとこと ダイユウ前提でSS。
「ユウキ、恋でもしているのか」
聞かれた言葉にぼくはどきっとした。
ジムバトル。……父さんと戦った後。部屋を出ようとしたところで不意に掛けられた言葉だった。
「なんで?」
動揺している表情を見られるのはなんだか気まずい。振り返らずに尋ねた。
「お前のその強さは、何かを求めてのものではないかと、ふと思ったのでね。それは誰かを求めてのことではないかと」
誰かを求めて……。
ひとの強くなる理由なんてものは、普通に対戦してわかってしまうものなんだろうか。
理由によって強くなり方に特色が出る? そんなことは、あるんだろうか……。
「うん、恋、している……」
「そうか」
正直に答えると父さんは、そっけなく短く返した。
なんで、そんな質問を投げかけたんだろう。思わず、といった感じで聞いてしまったのだろうか?
ぼくは何となく、扉のところに立ったまま、すぐに部屋を出て行くことができなかった。
「もし、そうなら……お前は価値ある人間に、恋をしたのだな」
「……え?」
「恋は、人を成長させる。お前の選択は、間違っていないということだ。信じて、進むといい」
その言葉に、ぼくは思わず「ほんとに?」と振り返って聞き返しそうになった。
ほんとに? この恋は、間違っていないの?
恋した相手は男の人で、しかも全然年の離れている大人の人で。
その選択は、本来ありえるはずはなく……。
男の大人の人に恋してしまったこの心を、ぼくはいつもどこかで不安に思っていた。
アブノーマルな恋心を子供の思考で合理化できずに、でもどうしてもその人に惹かれてしまっていて、なんとか自分で納得しようとしている。
だれかに聞いてもらいたくても誰にも相談できない。心に秘めるしかない恋。
それを……信じていいと、いってくれるのか……。価値ある恋だと。
大人の、父さんのその一言でおもいもしないほどほっとしてしまって、ぼくは自分がいかに子供であるかを思い知る。
子供なんだ。そして、父さんはやっぱりぼくの、父さんなんだ。
「ありがと。……素敵な人なんだ」
「そうか……がんばれよ」
「うん」
うなずいてそのまま振り返らず、ぼくは部屋を出た。
END
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